協働ロボットの選び方 — 16機種を俯瞰して決める

公開 2026年8月30日

協働ロボットの比較記事はたくさんありますが、たいてい「可搬重量とリーチで選びましょう」で終わります。それは正しいのですが、実際に見積もりを取る段階になると、その2つでは候補が絞りきれません。

この記事では、収録している16機種を材料に、どの順序で何を捨てていくかを具体的に書きます。

順序を間違えない

選定でよくある失敗は、機種の比較表から入ることです。表を眺めても決まりません。決まる順序は逆で、次のようになります。

  1. やらせたい作業を数字にする(何を、何 kg で、どこからどこへ、1分間に何回)
  2. 可搬重量とリーチで候補を絞る
  3. 環境条件で候補を消す(粉じん、水、油、クリーンルーム)
  4. ティーチングのしやすさで絞る(品種の切り替え頻度から逆算)
  5. サポート体制で決める

1 が出ていないまま 2 に進むと、あとで全部やり直しになります。まずワークの重さと寸法、サイクルタイムの要件を紙に書いてください。

可搬重量 — グリッパの重さを引いてから見る

可搬重量は手先に付くもの全部の合計です。ワークの重さではありません。

3kg のグリッパを付けた可搬 5kg の機種で扱えるワークは 2kg までです。吸着ユニットは真空発生器を手先に載せると重くなり、複数個を同時に掴む多連ハンドは 10kg を超えることもあります。

目安として ワーク重量の 2 倍程度の可搬重量から検討を始めると外しにくいです。加えて、カタログ値ぎりぎりでは加減速が鈍り、サイクルタイムが伸びます。速度が要件なら、さらに余裕を見てください。

収録機種を可搬重量で並べると、こういう分布になります。

可搬レンジ 該当機種 典型的な用途
0.5〜3kg COBOTTA、UR3e、duAro2 検査、小物の組立、ラボ自動化
4〜7.5kg TM5-900、MELFA ASSISTA、UR7e マシンテンディング、ネジ締め
10〜12.5kg CRX-10iA、HC10DTP、GoFa、UR12e 軽量パレタイジング、重めのワーク着脱
15〜30kg LBR iisy、UR16e、CRX-25iA パレタイジング、重量物搬送

リーチ — 端では姿勢が選べない

リーチで見落とされるのは、最大リーチ付近では姿勢の自由度がなくなることです。腕をいっぱいに伸ばした人が手首の角度を自由に変えられないのと同じで、垂直に押し込む、水平に保つといった姿勢の指定が可動範囲の端ではできません。

実際に使える範囲はカタログ値より一回り小さいと考えてください。メーカーの動作範囲図で、作業点が余裕のある領域に入るかを確認します。

パレタイジングでは特に注意が必要です。 積み上げた最上段に箱を置くとき、手先は「パレットの高さ + 箱の高さ + グリッパの厚み」の位置に届く必要があります。高さと距離を同時に要求すると可動範囲の端に来るため、多くの場合は昇降軸との組み合わせが前提になります。詳しくはパレタイジングロボットの選び方に書きました。

環境条件で一気に候補が消える

ここで半分に絞られることがあります。

粉じん・水・油があるか。 食品工場、切削油の飛ぶ工程、屋外。保護等級で候補が限られます。収録機種では MELFA ASSISTA(IP54、オイルミスト対応)や MOTOMAN-HC10DTP(防塵防滴仕様あり)がこの条件に応えます。同じ機種でも仕様違いで等級が異なるため、型式の末尾まで確認してください。

クリーンルームか。 医薬品製造や半導体の後工程では発塵が問題になります。収録機種で明確にクリーンルーム仕様を持つのは KUKA LBR iisy(11kg と 15kg に CR 仕様)です。この条件が付くと候補は数えるほどになります。

設置スペースがあるか。 卓上に置きたいなら COBOTTA(本体約4kg、リーチ342.5mm)や UR3e(設置面積 Ø128mm)のクラスになります。逆に、人ひとり分のスペースで両手作業を置き換えたいなら duAro2 のような双腕スカラが選択肢に入ります。

ティーチング — 3年後のコストはここで決まる

品種が頻繁に変わる現場では、この問いに先に答えてください。

新しい品種が入ったとき、現場の作業者だけで立ち上げられるか。

「できない」構成、つまり毎回 SIer を呼ぶ必要がある構成にすると、変更のたびに費用と待ち時間が発生します。多品種少量ほど、この積み重ねが効いてきます。

デモや商談では、新しい品種を追加する操作を最初から最後まで実演してもらってください。 そこにかかる時間と、それが誰にできる作業なのかを見ます。カタログには載らない部分ですが、運用コストはここで決まります。方式の違いはティーチングの方式で何が変わるのかに整理しました。

精度が要るなら選択肢は狭い

多くの用途では繰り返し位置決め精度だけを見れば足ります。人が教えた位置を繰り返すだけだからです。

ただし CAD の座標から直接動かす(オフラインティーチング)場合は絶対精度が効いてきます。これは繰り返し精度より通常一桁悪く、カタログに載っていないことも珍しくありません。

収録機種のなかでは ABB GoFa が繰り返し精度 0.02mm、オプションの Ultra Accuracy で絶対位置精度 0.1mm を公表しており、この条件を検討できる数少ない協働機です。

サポート体制は比較表に出ない

最後は、表で差が出ないのに実務では決定的な項目です。

故障時に何営業日で来られるか。 生産ラインが止まる工程では、これが機種の性能差より重くなります。国内メーカー(ファナック、安川電機、川崎重工、デンソーウェーブ、三菱電機)は全国のサービス網を持ち、既存の同社製設備がある工場なら保全体制を共有できます。

周辺機器のエコシステム。 グリッパやビジョンにドライバが用意されているかで、統合の工数が大きく変わります。Universal Robots の UR+ は登録機器の数で先行しており、自社で立ち上げたい場合に効いてきます。

海外メーカーの国内窓口。 収録機種でも Doosan M1013 のように代理店経由が中心で、保守体制が取扱店によって差が出るものがあります。国内入手性のバッジと、実際の窓口を必ず確認してください。

「柵なし」を前提に計画を立てない

最後に、最も誤解の多い点です。

協働ロボットの価値は「柵が要らないこと」そのものではなく、柵なしを成立させられる可能性があることです。成立させるにはリスクアセスメントという手続きが要り、時間と費用がかかります。

そして、柵なしで運用できるかはロボット単体ではなくシステム全体で決まります。可搬 30kg の CRX-25iA が 20kg の箱を 1.5m の高さで扱っているなら、アームが低速でも危険は残ります。エンドエフェクタが鋭利なら、それ自体が危険源です。

見積もりを取る前に、SIer へ「この構成で柵なしにできますか」と聞いてみてください。安全評価まで含めた提案が出てくるかどうかで、相手の力量もある程度わかります。 詳しくは協働ロボットは本当に安全柵なしで置けるのかにまとめました。

まとめ

  • 機種の表から入らない。作業を数字にしてから絞る
  • 可搬重量はグリッパ込み。ワーク重量の2倍から検討する
  • リーチの端では姿勢が選べない。動作範囲図で確認する
  • 環境条件(IP等級、クリーンルーム)で候補は一気に減る
  • 品種切り替えを自社でできる構成かどうかが、3年後のコストを決める
  • 柵なしはリスクアセスメントの結果であって、前提ではない

協働ロボットの比較一覧で、可搬重量・リーチ・国内入手性を並べて確認できます。数値が「—」の項目は、出典で確認できていないため空欄にしています。

出典

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