製造
溶接に使えるロボット
アーク溶接・スポット溶接の自動化。溶接技能者の不足を背景に、協働ロボットを使った小ロット溶接の需要が伸びている。
候補機種(1)
| 機種 | メーカー | カテゴリ | 可搬 | 価格帯 | 国内 |
|---|---|---|---|---|---|
| UR10e | ユニバーサルロボット | 協働ロボット | 12.5 kg | 500万円〜700万円(推定) | 国内販売あり |
溶接ロボットは小ロットでも成立するか
溶接の自動化は歴史が長く、自動車のような大量生産ではとうに標準です。一方で、多品種少量の中小規模の現場では「うちは無理」とされてきました。
その前提が変わりつつあります。理由は二つです。技能者の確保が難しくなったこと。そして、ティーチングの手間が下がったことです。
何が難しかったのか
溶接ロボットの導入が小ロットで成立しなかったのは、プログラム作成の工数が理由です。
溶接は、位置を教えるだけでは終わりません。溶接条件(電流、電圧、速度、ウィービング)を、板厚と継手形状ごとに詰める必要があります。従来はこれが専門技能で、品種が変わるたびに時間がかかりました。1 個作るのにプログラムを 1 日かけていては、人が溶接したほうが速いわけです。
いま何が変わったか
- ダイレクトティーチング。 アームを手で持って教える方式が使えると、溶接線をなぞるだけで位置が入ります。溶接の腕を持つ職人が、そのまま教えられます。
- 溶接条件のテンプレート化。 板厚と継手を選ぶと条件が入る仕組みが増え、条件出しの試行回数が減りました。
- 協働ロボットの価格帯。 柵込みの大掛かりな設備ではなく、台車に載せて工程間を移動させる構成が組めるようになりました。
- オフラインティーチング。 CAD データから溶接線を取り出して、実機を止めずにプログラムを作れます。ただし絶対精度の補正が要ります。
成立の目安
次に当てはまるほど、成立しやすくなります。
- 同じ品種を 10 個以上まとめて流せる。 ティーチング時間を個数で割ったとき、人が溶接する時間を下回るか。
- ワークの位置決めが安定する。 治具でワークを毎回同じ場所に置けるか。位置がばらつくなら、タッチセンシングやアークセンサ、あるいはビジョンでの倣いが要ります。
- 継手形状が単純。 直線や単純な円弧が中心なら成立しやすい。複雑な三次元曲線は難易度が上がります。
- 溶接長が長い。 長い溶接ほど、ロボットの速度と均一性が効きます。点付けが多い場合は効果が薄い。
治具の設計が本体より重い
溶接ロボットの導入で費用と工数の中心になるのは、多くの場合治具です。
ワークを毎回同じ位置・同じ姿勢で固定できなければ、教えた軌跡がそのまま使えません。品種ごとに治具を作ると数が増え、置き場所と段取り替えの手間が問題になります。
汎用の治具で複数品種をカバーできないか、位置決めピンの共通化ができないかを、ロボットを選ぶ前に検討してください。ここで設計をサボると、導入後に「治具の交換に時間がかかって回らない」となります。
安全と作業環境
溶接は、協働ロボットでも保護方策が必要になりやすい工程です。
- アーク光。 直視すると目を傷めます。遮光の囲いか、しゃ光カーテンが要ります。
- ヒューム。 局所排気装置が必要です。ロボット化しても、この要件は消えません。
- 高温のワーク。 溶接直後のワークは高温です。人が接触する可能性を評価します。
- スパッタ。 飛散対策と、ロボット本体の保護カバー。
「人と並んで作業できる」という協働ロボットの利点は、溶接では光と煙の対策で相殺される部分があります。それでも、柵付きの専用セルを組むより設置面積が小さく、移動できることの価値は残ります。
費用を見るときの注意
溶接ロボットの見積もりには、次が含まれているかを確認してください。
- 溶接電源とトーチ(ロボット本体とは別です)
- ワイヤ送給装置
- 治具
- 遮光囲い、局所排気
- トーチクリーナ(スパッタ除去の自動化)
- ティーチングと条件出しの工数
ロボット本体は、システム全体の一部にすぎません。
関連する言い方: アーク溶接 自動化 / 溶接ロボット